第10回 旅とアートのお話

2021.12.22(水)

第10回のテーマは、旅です。
今回は、急遽オンラインでの開催になりました。

「グランドツアー」という言葉を聞いたことがありますか?
旅行会社がよく掲げている豪華な旅ツアーとしてよく耳にしますが、そもそもは、美術ともすごく密接な関係のあることのようです。

グランドツアーとは、17世紀〜19世紀にイギリスの人たちが始めたもので、美術、文化的に少し遅れていたイギリスが、ヨーロッパの中心に向かったことが始まりで、裕福な貴族の子弟が教養を高めるためにヨーロッパを馬車で周遊する旅のことをさします。

なぜ、イギリスでグランドツアーが始まったのかというと、当時のヨーロッパの教養人において、自分たちのルーツがある古代ギリシャ、古代ローマについて学び再評価することは重要なこととされていたが、イギリスは国力は強いものの物理的に土地が離れていて文化が果てていくことが問題で、文化的に田舎だったそうです。

教養を身につけるための旅とはいえ、半年にも及ぶ旅で、使用人や馬引きなどもつれていき、荷物もたくさんあるからとってもお金も時間もかかるので、特権階級の人たちしかできなかったようです。

そもそも美術作品は、基本的には1点もので同じものは1つもなく、動かすことができない。美術作品は、自分自身で動かないと作品が見れないから、美術作品を見るということは、実は身体的な体験。現代にあるサブスクやマンガ、本はお家にいながらにして楽しむことができるけど、絵などの作品は買って鑑賞することはお金がないとできない。

例えば、「モナリザ」などの作品は、教科書やメディアなどで見たことのある有名な作品ですが、これを見ることができるのは、写真というテクノロジーや印刷の技術が発展してはじめて、コピー(復製)ができるようになったから、多くの人に広くイメージが行き渡るようになったようです。

図版は視覚的情報で、本物のブツはルーブル美術館だけにあるから価値がある。ということを考えると、美術は一見開かれているように感じるけど、そうではなくて閉じられている。

人々は、美術作品の図版をみているので美術作品を見た気になっている。美術作品は、うごかすことができない財産、自分自身で動かないと作品が見れないから、美術作品を見るということは、身体的な体験。美術作品が高級なのは、1点もので不動産で、旅をして自らの体を動かして自分からアクセスしないと見に行けないという“限定”があるので“閉じられている”ことがわかる。

“閉じられたもの”は決してネガティブなものではなくて、美術館にいくまでの道でなにかおもしろい風景に出会うことがあるかもしれない、または誰かと出会ってコミュニケーションをとることなど楽しいことがあるかもしれない。逆に“開かれている”もの、例えばサブスクやテレビ、ネットの写真などは家にいながら簡単に1人で見れる分、コミュニケーションが生まれたりしにくい。つまり、世の中では、“開かれているもの”の方がよいとされているが、“閉じられたもの”の方が豊かなこともたくさんある。

 

つまり、美術作品は開かれていますよー!と声を大にしていいたいのではなく、美術作品は“閉じられたもの”だし、難しいもの。だけど見るポイントをしれば案外おもしろい。そう思える仲間を増やしたい。

今回のテーマである「グランドツアー」のように旅をすることは大切で、美術館にいくこと、作品を見に行くことで、ちょっと移動するだけで、さまざまな出会いにつながるということをお話しされていました。

たしかにそこに行くだけで思いがけない出会いだったり、新しい発見がありますよね。
私たちがアンテルームなはに作品を見に歩いて行くこと自体が「旅」で、そこに向かうまでに出会った猫や子どもたちとの出会いも素敵な時間でした。
ぜひみなさんも「旅」をたのしんでみましょう♪

 

 

主催:NPO法人地域サポートわかさ
「アーティストと開発する社会教育プログラム」
支援:沖縄県、公益財団法人沖縄県文化振興会
「令和3年度沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業」