アーティストトークイベント報告レポート

 

部活動成果発表会「つながるを、つくる。かかわると、かわる。」展に関連して、部活動のアーティスト顧問によるトークイベントを行いました。

登壇者は、「ダンボール部」顧問・儀間朝龍、「ポストポスト部」顧問・平良亜弥、「ユーチュー部」顧問・藤井光の3人のアーティストに進行役として美術批評家の土屋誠一さんを進行役に迎えました。

初めは、宮城館長による「アートな部活動」のお話です。

そもそもアートな部活動とは?なぜこのプログラムに取り組むことになったのか、これまでどんな取り組みをしてきたのかを紹介しました。

少し簡単にまとめると。
コロナ禍において、これまでとは違う生活様式になり、様々な場所や機会、人と人のつながりが失われ、社会の弱いところが顕在化しました。

このような状況下で、自治会や町内会などの地縁コミュニティーでは、これまで既につながりのあった人のことは把握し気にかけているが、コロナ禍が原因で困りごとを抱えた人やそこに加入していない母子世帯や外国人などの想像ができない状況にありました。

一方、地縁ではなく興味関心でつながっているテーマ型なコミュニティは、支援の取り組みが早かった。漠然とした地縁コミュニティだけでなく、そこに小さなコミュニティが多層にあることで居場所がより多くなると感じました。

しかし、コミュニティは、価値観が近い同質性の高い人たちが集まるので、どうしても排他的になる側面もあります。

そこで、考えたのが「アートな部活動」です。
様々なコミュニティのなかで、既存のコミュニティの超えて新たなコミュニティを地域の中で作りたい、しかし価値観の近い人たちが集まると排他的になってしまうので、アートの想像力で緩やかなつながりを生み出したいという想いからこの取り組みが始まりました。

その上で、ダンボール部、ユーチュー部、ポストポスト部とは、どのような部活なのか、これまでどのような活動をしてきたのかを紹介し、先日開催した部活動成果発表展「つながるを、つくる。かかわると、かわる。」の様子を紹介していただきました。

これを踏まえて、今回進行役として依頼した美術批評家の土屋誠一さんにバトンを引き継ぎ、アートな部活動の3人のアーティストによるアーティストとしての活動や問題意識についてお話していただきました。

土屋誠一(美術批評家)

土屋さんは、8月に開催した「アート×社会教育」キックオフミーティングから、毎回トークイベントの登壇者として参加していただいています。

大学で専門的に教えているだけでは間に合わないので、早い段階で地域に出てアートに触れる機会や社会教育、なかでも鑑賞教育を取り込んでいく必要性を感じ、今後地域に出て活動をしたい!という想いから、公民館に相談にきてくださったことがきっかけとなり、毎回トークイベントに参加していただいています。
今回は、ホテル アンテルーム 那覇で開催した部活動成果発表展「つながるを、つくる。かかわると、かわる。」に足を運んでいただき、それを踏まえて3人のアーティスト顧問からトークを引き出していただく進行役として参加していただきました。

さっそくアーティスト顧問の紹介です。まずは、ダンボール部顧問の儀間朝龍さん。
儀間さんは、ダンボールを素材に制作しているアーティストです。
「流通」と「消費」をテーマに、ダンボールを素材に身の回りのモノを制作しています。また、「ダンボールを分解して新しいものを作る」をコンセプトとしたダンボールを使ったステーショナリーブランド「rubodan」の代表を務めています。
ダンボールで作品を作るようになったきっかけは、那覇の牧志公設市場からでるダンボールのゴミ山を毎日のように見ていて、このダンボールを使ってなにかできないかなと思っていたある日、雨に濡れたダンボールのはしっこがめくれているのに気づきました。もしかすると、ダンボールを水に濡らすと1枚1枚紙になるかもしれない!とひらめいたことから始まったそうです。
ダンボールを水につけて紙にする方法に“simple paper made”という名前をつけて、製法としてこのアイデアを広めています。
現在は、ダンボール紙を使ったポップコラージュ作品を制作し、国内外で展覧会に参加しています。「rubodan」としては、県内の作業所と共同で商品展開を行い、オリオンビールさんとも提携しながら活動しています。
続きまして、ポストポスト部の平良亜弥さんの紹介です。
平良亜弥さんは、光や影など日常の何気ない風景に小さな変化を生み出すインスタレーション作品やパフォーマンスなど沖縄を拠点に精力的に活動しています。
ポストポスト部では、アーティストとしての参加というよりは、3年間パーラー公民館のスタッフとして地域で長らく活動していることの延長としてポストポスト部のアイデアを考案し、顧問として参加してくださいました。
インスタレーションとは、ある特定の室内や屋外などに作品を置いて、作家の意向に沿って空間を構成し変化・異化させ、場所や空間全体を作品として体験させる芸術の手法のことです。
ホワイトキューブ(白い展示空間)で展示をすることが少なく、人が生活をしている街や場所、商いをしてい場所など、自分の好きな空間を探してそこからインスピレーションを受けて作品を作っているそうです。空間とそこにいる人の雰囲気を気に入ってそこに入り込んで作品を制作しています。
続きまして、ユーチュー部の藤井光さんの紹介です。

藤井さんは、映像メディアを中心にアーカイブ資料などを取り上げ、社会の事象、歴史や記憶、関係性を再解釈し、未来に向けた新たな展望を提示する作品で知られています。いま注目の映像作家として、日産アートアワード2017でグランプリを受賞したほか、Tokyo Contemporary Art Award 2020-2022に選出されるなど国内外の美術展で活躍しています。

今回は、自分アーティスト活動を「つながるを、つくる。かかわると、かわる。」のテーマと関連させて紹介してくださいました。『「時間が」つながるを、つくる。』というテーマに歴史の中で闇の中に消されていった時間の掘り起こす作品、『「時間」がかかわると、空間がかわる。』というテーマにつなげた作品を紹介していただきました。

後半は、部活動におけるアーティスト顧問としてお話を深めていきました。
土屋さんが展覧会を見ての感想として上がった点がこちら。

ダンボール部が描く「未来の○○」は、必ずしも明るい未来ではなく暗い未来もある。
地球ハートクラブがステッカーを使って活動に還元されているのもうまく地域に落とし込まれている。

ポストポスト部は、いわゆる「遅いSNS」であり、日常につかっているテクノロジーがいかに早くて乱暴なものをリマインドしてくれた。手紙の返事が遅いことも、遅くないちゃんとコミュニケーションとれないんだよと自覚した取り組みだなと感じた。

ユーチュー部で特に印象に残ったのが「宝探し」で自分自身の30年の変化を表現していたビデオというツールを作ることで、自分が考えたことや思ったことを表現して、周りもそれを知ることができた。

 

その後は、各顧問アーティスト3人が同じ場所で交流するのは、ほぼはじめてなので顧問同士で何か聞きたかったことをそれぞれで意見交換をしました。

・どのように部活動の目標を設定したのか
・部員の入れ替わりについて
・顧問として何を伝えられたのか
・活動を通しての課題
・地域コミュニティーにどのように寄与したのか
・今後の部活動動き

などについて話ていただきました。

打ち合わせ中に電話対応する館長 (なんだか、おもしろい絵だったのでおもわずスクショ)

今回のトークイベントでアーティストとしての作品やそれぞれの問題意識を知ることで、各部活動の取り組みの意味がより深まったのではないでしょうか。事務局としても初めて聞く話が多く、一番ワクワクしながら聞いていたかと思います。

毎回ブログなどで紹介している目に見える部活動の取り組みや作品とは違った、部活動の本来の目的やアーティスト顧問の想いを知ることができるので、まだご覧になっていない方は、ぜひ見ていただきたいです!映像は、YouTubeに掲載次第お知らせいたします。

今回登壇していただいたアーティスト顧問の皆様、進行を引き受けてくださった土屋さん、最後までありがとうございました。
ご参加いただいた皆様も長時間、お付き合い頂きありがとうございました!
参加いただいた方は、アンケートも受け付けておりますので、ご協力よろしくお願いします。こちらから「アンケートのご協力お願いします!

 

主催:NPO法人地域サポートわかさ
「アーティストと開発する社会教育プログラム」
支援:沖縄県、公益財団法人沖縄県文化振興会
「令和2年度沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業」