2日め(後編)結びの本当のカタチ

『パーラー公民館祭り!』2日め後編です。

2日め(前編)3年間をみつめて→

活動報告・検証報告を受けて、“新しい公民館のカタチ”をテーマに3名のゲストのみなさんでディスカッションしていただきました。
司会は、検証報告をしてくださった大澤寅雄さんです。
大澤さんは実は、この3年間パーラー公民館を体験してはいません。
数字とアンケート内容やスタッフの日誌から、パーラ公民館を見つめてきた珍しい存在。

3名のゲストのみなさんも、スタッフ、地域住民といった当事者ではない方ばかり。
パーラー公民館をデザインした、アーティストの小山田徹さん。
社会教育学を専門にされている、東京大学大学院教育学研究科教授の牧野篤さん。
NPO支援をされている、ふくおかNPOセンター代表の古賀桃子さん。
みなさんからみたパーラー公民館とはどんなものだったのでしょうか?

本来の公民館とは?

トークの中で、今の公民館はあまりにも教育的になりすぎてしまったのではないかということが話題にあがりました。
でも、本来の公民館は、もっと生活に密着していて、自分たちで自分の地域のことを何とかしようという人が集まって、自分たちで考えて実現する場所であったはず、と牧野さん。
目的が先行してしまうと、いろいろな決まりごとが出てきて、窮屈になってしまう。それは、学校も同じ。
子どもたちの遊びの中にある学びが、本来の公民館にも機能としてあったはず。
遊びを目的に、それを実現するためにプロセス自体が目的になっていく。
遊びの中では、目的が変幻自在に変容していく。
逆に目的を固定化していくことで、生きづらさや居づらさを生じさせてしまう、現在の社会にみられる状況だなと思いました。

ひらめきの中の「学び」

トークの最中、小山田さんがあることに気づきました。
2016年に実施した「あちゃ〜ぬ地図ゆ」で制作した絵地図に、屋根(かんむり)が抜けたであろう「学」が描かれているのです。
この字に注目するところが、さすが小山田さん!!
まるで子どもがひらめきながら遊びを開発して、学んでいる様子を表しているみたいです。

あけぼの公園では、子どもたちが遊びの中で学んでることが多様にあります。
異年齢で性別もごっちゃになって、いろんな遊びを開発している子どもたち。
そして、それを見守る地域の方が一人でもいてくれる状況がパーラー公民館にはありました。
でも、それは現代社会が最も失っているもののひとつなんじゃないかと小山田さん。
それは、現代社会が抱える「逃げ場」の問題でもあるのでしょう。

「育つ」の意味から社会を考える。

古賀さんからは、パーラー公民館では子どもたちにとって多様な学びがうまれたとはいえ、働き盛り世代の参画が少ない。
そして逃げ場や自己実現の場というところでは、まだ不足しているのではないかという課題をあげていただきました。

検証報告でもあったように、曙地区では、30〜50代の参加は低く、子どもたちと高齢者世代の参加が主です。

これに対し、牧野さんからこんなお話が。
「育」という字の意味は、育てるではなく「育つ」なんだと。
子どもが育っていくのに、大人の関わりが必要だと考えがちですが、実はそうではなく、高齢者と言われるじじばばとの関係が大切なんだと言うのです。
白黒はっきり分からない子どもたち。働くために白黒はっきりさせるようになる大人。そしてだんだんと曖昧になっていく高齢者。
グレーゾーンの世代である子どもと、モノトーンの時代を経てグレーゾーンに戻ってきた高齢者が関わるような環境があるからこそ、子育ては社会になる。
子育て、教育が家庭の中で完結してしまうと、社会に広がっていかないのですね。
そういう意味では、パーラー公民館に参加している世代が子どもと高齢者だった曙地区と、参加人数は少ないものの割合でみると30~50代が多かった都市部の緑ヶ丘公園での結果をみると、いろいろ考えさせられます。

パーラー公民館のあたらしいカタチ

会場からも意見やアイデアを共有しながらトークは終盤へ。
1日めの対談で登壇された上原耕生さんからは、多世代が集えるように街路樹に果樹を植えるというアイデアをいただきました。
それに対し、ベトナムのバナナ農園にあるバナナは、熟して落ちたものなら誰でもとっていいそうだと、小山田さん。
さらに生き物をキーワードに加えて、誰もが関われる場がうまれると面白いねという話も出てきました。

また、年間100泊もしているキャンパーの宮平さんからは、こんな意見もいただきました。
パーラー公民館を続けるためには、趣味的に楽しんで実施することが継続のポイントになるのではないかと。
主体になる人がいろいろいれば、そこに集る人も変わる、そういう面白さもあるというお話をいただきました。
面倒くさいを超えるのは「楽しい」気持ち。
覚悟をもって継続する人が現れるのを待つのではなく、公民館活動を趣味化して、楽しく継続することを考えるとワクワクしますね☆

緑ヶ丘公園で活動されている“チームまちなか”の野原さんからもコメントいただきました。
パーラー公民館を緑ヶ丘公園で実施するきっかけとなったのは、チームまちなかさんの存在があったから。
仕事をしながら地域で活動しているメンバーさんがほとんで、どのように地域に開いていくかが課題としてある。
それでも、今回の報告会でいろいろなお話を聞くことで、継続していくことを考えることがワクワクしてきた、と野原さん。

働く人の参画というところで、会場からはこんなアイデアが。
地域に貢献したい企業も、実際どうやって貢献すればいいか分からないというところも多いのではないか。
お金以外で貢献できる方法として、働くお父さん、お母さんを企業から派遣するのはどうか。
働きながら地域に貢献する方法として、人材派遣のアイデアは面白いです。
さらに、こうしたアイデアを企業に提案していくこともどんどんしていってもいいなと思いました。

曙で子ども食堂をされている玉寄さんからは、パーラー公民館の継続についてご意見いただきました。
みなさん継続したいという想いはそれぞれにある、けれども一番のネックは設営・片付けが大変だということ。
公園内に備品等が保管できて、もっと気軽に設置できるようなカタチになれば、子ども食堂としていろいろと協力できることがある、という頼もしい言葉をいただきました。

「つどう・まなぶ・むすぶ」の「むすぶ」を考える。

最後に、公民館の機能「むすぶ」について、牧野さんからお話いただきました。
みんなが集って関わり合いながら、寄り添ってもらい、感情が交流する場があり、自分は大丈夫だと思えるような環境になるということが、「むすぶ」ではないか。
自分が主役になれる、助けてくれる支えてくれている存在や関係にある、ということが大事なんだと。
新しい公民館のカタチをパーラー公民館がこの3年間で示してくれて、さらに今後の継続を考えたとときに課題が出てきたのであれば、さらに新しいカタチを見つけていく、そういう関係の場をつくっていくことが重要なのではないかとうことで締めくくっていただきました。

パーラー公民館は、固定化したカタチではありません。その場で必要なカタチや方法を見つけて、どんどんリニューアルしていける。
公園に倉庫を設置して、そこからクルクル庇(ひさし)が出てくるという小山田さんからのアイデアもいただきました。
パーラー公民館のさらなに新しいカタチを生み出すために、今後もいろんな意見やアイデアをいただきながら動いていくことが、この先につながっていくのだと考えています。

レポートではご紹介しきれないことがたくさんあります。
「つどう・まなぶ・むすぶ」の意味を改めて考えたこの2日間でした。
ただいま、文字起こしをしてまとめていますので、お楽しみに〜☆

ご登壇いただいたゲストのみなさん、ご協力いただいたみなさん、そして来場者のみなさん、すごく楽しかったです!
これからも何度も顔を会わせて、いろんなアイデアを出し合って、面白いことを実現していきましょう☆
本当に充実した2日間でした、みなさん、ありがとうございます!!

パーラー公民館
企画・主催:NPO法人地域サポートわかさ
設計・監修:小山田徹/制作:High Times うえのいだ
支援:沖縄県、公益財団法人沖縄県文化振興会
「平成31年度沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業」