第13回 高橋由一とクールベをみる

第13回目のアート同好会は、最終回でした。2月7日にオンラインで開催。高橋由一とギュスターブ・クールベなどを見て学びました。

最初に顧問の土屋さんより時代背景についてお話がありました。
江戸時代、円山応挙や司馬江漢などがヨーロッパ絵画の影響を受けた透視図法(奥に遠ざかっていく技法、遠近法)で作品を制作したり、オランダから影響をうけた秋田蘭画が生まれたり、亜欧堂田善がエッチング(銅版画)を作成、発明家として知られている平賀源内は、油絵を描くなど西洋の影響をうけた画家が多くいたそうです。

大政奉還され、武家の時代ではなくなった時代。天皇中心の国づくりが行われ、立憲君主制になりましたが、これもヨーロッパから学んだものです。江戸時代はほぼ鎖国していましたが、海外とも付き合う時代になってきました。明治維新はいきなり起こったのではなく、少しづつ変化はおきていたそうです。

だいたいの時代の傾向がわかったところで、今日のメイン高橋由一を見ました。
由一は江戸時代に生まれた洋画家です。油絵の描き方がわからなかった由一は横浜に住んでいたチャールズ・ワーグマン(風刺漫画。イラストレーターのような感じ)から油絵の技法を習いました。それは新しいテクノロジーを学ぶような感じだったそうです。代表作の「鮭」を見るとあたかも本物らしい作品です。その当時の日本では、浮世絵のように実物を変形して描くのがあたり前の時代だったので、由一の作品のような本物みたいな鮭は当時描かれていなかったそうです。

遠近法は見るためのテクノロジーだとしたら、油絵は描くためのテクノロジーでした。
由一の花魁を描いた作品がありますが、「モデルは怒ったんだよ。なんでだと思う?」と土屋さん。
あたかもそこにいるかのように描くため、花魁は化粧をしていない顔で描かれたんです。その方がリアルに見えたから。着飾るのが仕事の花魁は怒ってしまったんですね。

焼き豆腐と豆腐と油揚げの作品を見せながら「俺、由一大好きなんだよ。どう思う?よくない?」と土屋さん。
そこのあるのは、油絵というテクノロジーを塗った作品なのだと。「僕らは絵の具を見ているけれども、そう意識はしてない。豆腐に見える様に白い絵の具をペタペタ塗っていると、あら不思議!豆腐に見えます!というのは大きな発見」由一にとって新鮮なことでした。

19世紀の西洋絵画では、あたかも本物らしく見えるものが描かれていました。たのまれて描く肖像画は、超イケメン!ありのままでなく、モデルが描かれたい様に理想化されたのです。あたかも本当かのようにというのは、見たまま描くこととは違うんですね。

 

ギュスターブ・クールベは1819年生まれですが、写実主義(レアリスム)といわれる現実通りに描く手法がとられました。
「オルナンの埋葬」を例にあげて見ました。人が埋葬される場面だけど、よそ見をしている人がいたり、全ての人が本当に悲しんでいるわけではない様に見えます。「現実はこんなものなんだよ」と土屋さん。当時この作品が出た時は大騒ぎになったそうです。
由一の花魁の作品と同じ様なことが、同じ時代に遠く離れた地域で起こっていたんです。

クールベの海を描いた作品では、ペインティングナイフを使って絵の具で絵を盛り上げながら描いており、絵肌も荒っぽい雰囲気です。クールベのレアリスムとしては、絵の具というメディアを際立たせるために、リアルな絵の具の感じを見せたかったのだといいます。由一の豆腐に似ていますね。

由一は世界的な巨匠と同じことをしていました。(当時クールベのことは知らなかったのに!)

違う文化圏で暮らし、条件は違っても、同じ時代においては同じ課題を抱えているといいます。
「芸術を介して同じこ とを考えている人が全く違う地域に存在しているということは希望」と土屋さん。

今はインターネットがあり、先進国は同じ様なテクノロジーのなかで生きています。言語的な壁はなくなり、世界中から同じことを考えている人を発見しやすくなっています。
由一とクールベが現代を生きていたのだとしたら会うことができたかもしれない、気があったかどうかはわからないけど。
人はいろんなことを考えています。それなのに自分と同じことを考えている人が地球の裏側にいて、もし繋がることが出来るとしたら素晴らしいことです。
私たちは今、繋がりやすい世界に生きています。自分と同じことを考えている人と、何か一緒にできるかもしれないというのは希望です。芸術の可能性がひろがります。

今日は最後のアート同好会だから、と締めの言葉もいただきました。

「芸術は想像力に関わる。芸術作品は、見るだけも想像力を羽ばたかせてくれる。想像力の発見ができ、感動する。
美術は美しくなくてもいい。人間のイマジネーションをふくらませてくれる。アニメ、漫画なども含めて表現されるものをみて、全然ちがうものが実は同じなのだと発見することができたら幸せ。実は繋がってるのだとわかると新しい理解となる。
人間は昔から何かしらの ものをつくっている。人はひとりでは生きていけないので、コミ ュニケーション手段としていろんなことをやる。表現はコミュニケーションの手段。「この話をカタチに残したい!」と思ってつくったものが、何万年後の何者かに繋がる。必死に表現に取り組んでいる人や、それに関わることは喜ばしいこと。
土屋のおじさんの話につきあってくれてありがとう。みなさんの糧になることを願うばかりです。」

アート同好会全13回終了しました。ご参加お疲れ様でした。

主催:NPO法人地域サポートわかさ
「アーティストと開発する社会教育プログラム」
支援:沖縄県、公益財団法人沖縄県文化振興会
「令和3年度沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業」