第12回 ルネサンスと北方ルネサンス

第12回目のアート同好会は、1月26日にオンラインで開催しました。
今回のテーマは、ルネサンスと北方ルネサンスについて。

ルネサンスとは、今でいうイタリア(ローマ、フィエンツェ、イタリア)を中心におこった文明の復興運動。古代ギリシャ・ローマは最高だった!と考え再生させよう、復興させようとしました。
イタリアルネサンスというと、基本的に明るくて力強 い文明。画家であるとか、発明であるとか、当時はカテゴリー分けされてなかったそうです。

「この時代の三大巨匠といえば誰?」という顧問の土屋さんの質問がありました。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ・ブオナロ ーティ、ラファエロ・サンティと言われています。聞いたことありますか?

モナリザで有名なレオナルド・ダ・ヴィンチはそもそも画家はないと言われてびっくり!しばしば万能人と呼ばれるほど何でもできる人だったそうですよ。ノートなどに絵がたくさん描かれているので画家として評価されたのだそう。油絵の作品の数的には少ないのだそうです。技法的には空気遠近法という、遠くのものをぼんやり描く描き方をしていました。

ミケランジェロは彫刻家であり、画家であり、建築家でもありました。一番有名な作品はピエタ像ですが、他にも多くの彫刻作品を残しています。ローマのバチカン市国にあるシスティーナ礼拝堂の天井画を見てみると、壁画の中に柱が描かれていて、本物の柱と一緒に見るとだまし絵のようになっています。壁画は修復されて色がとっても鮮やかで、ミケランジェロが彫刻だけでなく、画家としての素晴らしさもうかがえます。「最後の審判」はキリストが生前の行いによって人々の魂を裁いているシリアスな情景なのに明るい色彩で描かれています。建築家としてはサン・ピエトロ大聖堂のドゥオモに関わっています。設計した「ラウレンツィアーナ図書館」は滝が流れる様なデザインがとても素晴らしく、とても絵画的。
当時は建築家だとか、彫刻家だとか、画家だという風に分かれていなかったそうです。(←とても重要なポイント!)

ラファエロは、絵画と建築を手がけた人物。ルネサンスの三代巨匠の中ではたくさんの作品を残しているのに、37歳でなくなったそうです。(すごいですね!)
有名な作品が多すぎてどうしようと言いながら「アテナイの学堂」を例にあげて紹介していただきました。あえてとポーズを崩すことで画面に動きを作ったりする手法がありますが、ラファエロは造形的に安定感のある作品をつくっていました。シンメトリーな作風で、安定感があるのが面白さになっています。

ここまでお話しをうかがったところで、これは本題じゃないんだと土屋さん!

話はガラッとかわり北方ルネサンスの話になりました。
ルネサンス美術と北方ルネサンス美術は違うそうです。北方ルネサンスは、位置的には今でいうドイツやオランダで、主に絵画が多く生まれました。
ブリューゲルという名前の人はいっぱいいるんだとおっしゃりながら「バベルの塔」を描いたピーテル・ブリューゲルの話になりました。ブリューゲルは画家の家系で、16世紀に生きた人です。(家族の中でブリューゲルという名前で作品を残している画家がたっくさんいます)
北方ルネサンスに描かれた作品は、色だけでなく内容が暗いものが多かったそうです。ブリューゲルは、細密描写(細かく描き込む手法)が得意でしたが、この様な描き方は三代巨匠にはありませんでした。

「バベルの塔」はひきの画面(全体で遠目)で観てもわからないので寄りで(画面に近づいて)観るとそのすごさがわかります。点が描かれていますが人に見える!それがすごく重要だといいます。
「手で描いているのに、こんなに小さい点なのに、動いている人が描かれているのがわかるってすごくない?」といつになく熱く語っていただきました。崩れ落ちる建物を描くことで、人間はおごるなかれ、謙虚であれという教訓を表しているのだそう。(これも重要なポイント!)

ブリューゲルに影響を与えたヒエロニムス・ボスの作品は綺麗というよりグロテスク。なぜ、あえてグロテスクな表現したのでしょうか?
グロテスク・リアリズムという概念があります。人間のおろかさや、気持ち悪いもの、汚らしい部分を描くことによってこんな風にならないように考えたそうです。権力をもっておごりたかぶると天罰が降りる。「バベルの塔」も天に登る塔を描いたから天罰が下ったんではないでしょうか。このようなどろっとした人間味が北方ルネサンスの特徴だそうです。オランダ、ドイツでの芸術の面白さは、綺麗という観点だけで観るとわからないそうです。

続いて「大きな魚が小さな魚を食う」を見ました。
食べることに貪欲すぎるのは罪、たべすぎるな、贅沢するな!でも食べすぎちゃうよねといった人間味が表わされています。
人間をひいた視点でみると、滑稽なところがある、いいとこも悪いとこある、そんないろんな人間模様を描く試みをしていたようです。

この世のものとは思えない、何か気持ち悪いものを描くと同時に、人間の複雑さを表現しています。
芸術とは、「美しいものを表現しましょう!」と 考えるものだけど、そもそも芸術って美しいものだけを描くのではなくて、汚らしい部分から本質をえぐり出すこともできるのです。「きもかわいい」っていう感覚は昔からあったようです。見て美しいものだけが美術ではない。 きもかわいい、きもいものを見たくなっちゃう欲望があるのです。それを含めて 人間の営みがある。
「「きゃー!」だけど見たい!という感覚ってあるよね(笑)」と土屋さん。

芸術の可能性はひろい!単に美しいもの、正しいものだけでなく、間違ったこと、おろかなことを描くのも芸術です。それが重要!(今回は重要なポイントが沢山ありますね)
「僕らはグロいシーンが見たい!だから鬼滅がはやるんだよ。芸術を見る幅が広 がると面白いんだよ!」

次回はいよいよ最終回です。

主催:NPO法人地域サポートわかさ
「アーティストと開発する社会教育プログラム」
支援:沖縄県、公益財団法人沖縄県文化振興会
「令和3年度沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業」