小学3年生から高校生を対象とした演劇サークル。演劇やダンスなどの表現活動を通してコミュニケーションを深め、人材育成とキャリア教育の一助として活動を続けています。結成16年、本公演では会場を常に観客で満席にする実力派。
公民館名 浦添中央公民館(分館)
サークル名 浦添ゆいゆいキッズシアター
代表者名 真栄田義之(まえだよしゆき)
活動人員 50名
設立年月日 平成12年
活動日・時間 日・10:00〜13:00 水・18:00〜21:00
サークルの活動内容を教えてください。
2000年に浦添市の事業でスタートしました。
平成18年に市の事業から離れ、任意の団体になっています。
水曜日18:00〜21:00までダンスのレッスン。日曜は10:00〜13:00に演技のレッスンを行っています。日曜は朝の9:00から寺子屋といって自主勉強をやっています。大きくは年二回の発表があり、そこを目標に日々練習を行っています。10月は本公演(小3〜高3)2月は大人も加わっての公演になっています。
<単年度の市の事業から継続できる団体へステップ>
演劇を活用したワークショップの開催をすることで活動を始めました。市での事業は1年単位の単年度です。ということは、来年あるかどうかわかりません。継続するかどうかが年度末もしくは年度がはじまってから決まるという性質がありました。当たり前のことですが、事業は終わったら終わりなので、関係者からは子どもたちの盛り上がりを考えると任意の団体として継続してやることがいいのではないかという声がありました。
ありがたいことに各方面の努力で、事業は毎年開催にこぎ着けていたという状況でした。
立ち上げ時は平田大一さんと始めました。そのころ平田さんがうるま市の勝連で「キムタカのあまわり」という舞台づくりをやっており、勝連の翌年に結成されたのが浦添の団体になります。始めの頃は地元の歴史を取り入れた「太陽(てぃだ)の王子」という舞台をつくっていました。
<演劇を活用した事業成果が大きい>
事業の後に団体を結成することになったのは、継続でやってきた(1年は休みがある)成果が大きかったです。
浦添市の文化振興事業については「文化振興長期計画」に沿って事業が行われていきます。大きな柱に市民の演劇を活用した事業というのがありました。子どもたちが成長し、変わっていっているということから、浦添の人材育成として非常に良いということになりました。実際にいろんな人材を輩出しています。
団体をつくり今日に至っています。子どもたちも成長して、ゆいゆいキッズシアターを卒業しても舞台に関わる精鋭たちが出てきました。そこで大人の演劇を創作することができるようになりました。
2011年に「アオリヤエ」というオペラのワークショップを行い、舞台発表を行いました。翌年にはそれが発展する形で琉球オペラ創出事業として大人の演劇を創作しました。
子どもの演劇への取り組みを積み重ねた実績で、子どもの成長に伴い大人の部分もでてきたということになり、理想的な展開になっています。5年前に仕掛けて続けており、浦添の事業としては世代間交流がすごく上手くいっている事例になっています。
<会を支える体制>
会を支える大人は4人。代表の真栄田義之さん、副代表の大村広美さん、事務局長の佐久川幸江さん、書記会計赤峯尚美さん。子どもと大人の間をつなぐという意味もあり、青年部というのを作っています。青年部長に棚原奏さん、副青年部長に石川慶子さん、真栄田愛里さん。
保護者の方々は、父親たちは「腕っぷし父さんず」。母親たちは「肝玉母さんず」というグループで活動しています。
サークルの魅力は?
<人材育成と世代間交流>
ゆいゆいキッズシアターの活動は、感動産業と同じです。ゆいゆいの魅力は感動をどう与えるかということにつきると思います。
メンバーも感動することが大事ですし、そこから観客に波及してゆく感動も大事です。
関係者へも感動が伝わります。いったい何が魅力か紐解いてほしいです。
子どもたちとはことなるところで、運営する側は感動するような仕掛け作りをどうつくれるのかを考えなくてはならないです。
サークルの雰囲気をお教え下さい
練習中はとてもあかるく和気あいあいとしています。小学生から高校生までいるので、年齢の幅がひろいです。年上のメンバーが面倒をみるという感じの雰囲気があります。
オーディションで希望の役につけなかったときは、落ち込んでいるメンバーについては話をしてフォローします。それは「選んだ演出家の立場の人」がフォローします。
落ち込んでいることや、ショックだったことを言える子はまだいいんだけど、言えない子もいる。家に帰って、いろいろごちゃごちゃになって、保護者から声がきこえてくることもあります。選ばれなかったということ、それが学びの場でもありますね。自分の気持ちを言えるようになるとといいなと思います。
中高生が多いと落ち着いていますし、兄弟が少ない現代で、異年齢の子どもたちというのが一緒にいることはあまりないですから、面倒みるということもいいとおもいます。
基本はたのしいという雰囲気です。
サークルの参加メンバーはどのような年代が多いですか
小学校3年生から高校3年生までです。小学生が多いです。高校生5名中学生20名小学生25名です。
サークル参加メンバーの地域はどちらですか(公民館付近か)
浦添の事業として始まったので、浦添のメンバーが多いですが、近隣の西原や宜野湾などからも参加者がいます。佐敷や東風平からくるメンバーもいます。基本的に地域にこだわらずにだれでも参加できますが、練習場所に通えるかということもでてきます。
メンバーとはサークル外での交流もありますか?
<子どもたちの活躍>
練習や舞台公演以外では分館まつりをやっています。分館を利用している子ども文化連盟とイベントをやります。
以前には「太陽の継承」というのを結成して、浦添で活動する子どもたちの太鼓、吹奏楽、組踊、合唱、ダンス、ゆいキッズシアターで浦添市てだこホール杮落しをやりました。そのような交流もあります。
<東日本大震災以降は福島の子どもたちとの交流>
東日本大震災以降は福島の子どもたちとの交流もあります。これは「世界のうちなーんちゅ大会」のときに、震災のときに元気をもらって感動した曲でCDをつくった企業からその売上の100万円はソマリアへ、あとの100万円を福島のこどもたちへ寄付をしたという経緯があり実現したものです。40数人の子どもたちが福島から沖縄へきました。スポーツで交流したり、ゆいゆいとダンスワークショップで交流したりしました。
<受け身の観客から主催者へ>
上田情報ビジネス専門学校主催の講演を聞きに行くことになった時、ちょうど講演者がスポンサーである長野グランセローズの野球の応援に我無者羅応援團と行くということで、こどもたちも観戦させてほしいと頼みました。最初は、いっしょに観戦する予定だけでしたが、回の途中にあるグランド整備の時にファンサービスであるイベントで専属ダンサーが出演出来ないため、急遽代わりに出演していただけないかとお話しをいただき、沖縄で練習していって、交流しました。ただ講演を聞きにいくお客さんから、主催者に変わることでこどもたちのモチベーションが高まりますし、そのような交流のほうがこどもたちの成長にいいと考えます。こっちのほうが講演をきくより何倍もいいと思うんです。
シアターの組織にあるリーダーズの20数名で、金武のログハウスに研修会もおこなっています。
運営委員は本土へ公演会を聞きにいったりもしています。運営しているメンバーは演劇関係者でもなんでもないので、東京などへ観劇(ミスサイゴン)にいき勉強をしています。高校生以上でいくときはライオンキングなどを観劇したりしている。大人は完全自費です。子どもは予算化して行くようにしています。
今後の活動について
地域への貢献です。
私たちの活動をいろいろな施設にいってみてもらうとか、こどものげんきをおとなにもみてもらいたい。ゆいゆいキッズシアターだからできる地域貢献ということをやりたいです。
卒業生たちは、大学にいって社会人としてそれぞれの道を歩んでいます。学校の先生もいれば、演劇のプロの道へ進んだ人もいます。
演劇の道だけを進んでほしいわけではないのです
演劇を道具として活用して、感動体験をつんでほしいです。「調子がいいときは全部わすれていいよ」と語っています。でも、辛くなったときに、死にたい、逃げ出したいと思うようなときに、ゆいゆいキッズシアターでやっていたことを思い出してほしい。苦しくなったら、おおきな声をだして歌うんだよっていいます。
取材者名 真栄田・赤峯 (事務局)
活動歴 16年
サークルに参加したきっかけをお教えください
<子どもたちの姿をみて、大人がのめり込む>
私は子どもが小学校のときにゆいゆいに参加していましたから、それからの付き合いです。10年以上保護者として参加しました。親戚でもあり、太鼓も一緒にやっている現事務局の大村広美さんから「事務的なことを時間あればやりませんか」と誘われました。子どもも一生懸命やっていたので、どういうものか?と思って見学にきたんです。その姿に胸を打たれました。子どもたちの懸命な姿をみて、大人がのめり込むという感じで、むしろ、子どもが卒業しても私は続けています。(赤峯さん)
<クレーマーから代表へ・真栄田さんの関わり>
代表の真栄田さんの参加のきっかけも、子どもが参加していたことでした。
「私の子どもは卒業しても音楽のところでずっと関わっています。親子で途切れることなくかかわりつづけているんですが、最初はクレーマーでした(笑)。」
仕事を切り上げて子どもの迎えに行ったときのこと。父親としてできることをという気持ちもあり忙しいなかで時間をやりくりしています。ところが、練習は定刻の21時になっても終わらない。「小学校の4、5年というのは体力もない、明日は学校もあるというのにいつまで練習しているのか」とクレームをいいました。すると返ってきた言葉は「あなたやるきありますね」だった。変な人たちだと思いましたよ。
自主公演のころには子どもたちが一生懸命チケットを売っている姿に奮起し、自分もちょっとがんばったんですよ。で、きがつけば、どっぷりやっています。
そのころは浦添市からの予算もなく、自分たちでチケットを売って舞台の資金を調達していました。
サークルを続けている理由/たのしいところをお教えください
<大人の仲間ができたこと>
こどもが卒業してもつつけている理由。それは親戚のこどもたちがいっぱいいるような感じがあるんですよ。家族的な親しみがあります。そのときからの仲間が今もやっています。大人の仲間ができたということも継続の理由です。(赤峯さん)
<子どもの成長が心を動かした>
私はみなさんにもこの思いを伝えたい、伝えないといけないなと思って参加しています。最初は難儀でしたけど、やっているあいだに、子どもたちの成長していく過程がみえてきます。それがすばらしいと伝えたくてつづけています。子どもの成長が親のこころを動かし、真栄田さんはいま代表を務めています。大人は子どもの笑顔をみると元気になります。私は涙腺が弱いのか、子どもの一生懸命な姿をみると、ダンスをやっているだけで涙できてきます。(真栄田さん)
<常に変化すること>
変化がないと楽しくなくなってきます。「毎年おなじことばかりやって、子どももあきているさ」という親たちもでてくるんですよ。でも、なんでこの仕掛けをやっているかわかっていると、考えかたが変わってきます。自分の子どもの成長だけ思っていた親たちが、あの子もかわったねとみえてくることで、家族や家庭が変わってくるんですよ。子どもが感動しているだけではこんなに長くはつづかないですよ。( さん)
サークルでの目標やモットーにしていること
<モットー>
最近語っているのは、「あいさつ、そうじ、すなお」ということ。
長野の上田市に、上田情報ビジネス専門学校の副校長比田井和孝先生がいて。そこが実際に専門学校は資格をとって、就職につなげるというのが専門学校の学びだけど、その学校は就職したあとの話をしているんですよ。就職したあと、学生たちが幸せの人生になる授業をしている。そこが「あいさつ、そうじ、すなお」をモットーにしているんですよ。
県外のさまざまな情報をあつめて好い所は取り入れるようにしています。
サークル活動を通して感じていること
<16年間続けてきた秘訣>
こどもたちの笑顔です。これがあるから、いつまでもできるとおもいます。
<一番の苦労は集客>
お客さん集めが苦労をしています。ふたをあけたら満杯になっているんですが動員が当日しかわからないのです。数字が読めないとてもドキドキします。チケットは前売りはそれほどでないです。ほとんどが当日券ですね。会場から人が溢れて怒られたこともあります。ですから「ゆいゆいキッズは小ホールではしないでくれ」といわれて、大ホールでやっているのですが、キャパ1000で2回公演をほぼ満席にします。手売りです。プレイガイドでも販売していますが、動かないですね。ほとんど手売り。観客は出演者の身内が多いです。こどもの友達と親世代になります。
<クオリティを求めて>
子どもが子どもへ教えて行くというのは異年齢での交流など良い面もありますが、作品への向き合い方ということでみると、自己満足に陥ったりして、成長がない場合もでてきます。高校生にリーダーをつくっていくなかで、高校生に伝える人が必要になってくる。青年が必要だと感じています。リーダーズに対してはOBが行っています。
小学生は小学生の感受性があり、中学生は中学生の反抗期があり、高校生は高校生のジレンマがあります。大人が何か言うとどうしても説教臭くなります。人間関係のなかで成長するしかないから、青年がいればよいサイクルになると感じます。大人がいるとヤラされている感がでてきますから。憧れた先輩が話をするのはいい効果があります。
基本的にはプロの演出家をいれています。プロの演出家とこどもたちが一緒につくりあげるということをやります。演劇の指導者、プロが入って舞台を作ることで、こどもたちにいろんな考えがあることをつたえたいです。作品も沢山あります。
作品としても評価が必要ですし、学芸会になっていはいけないと思っています。舞台としてのレベルは高いものを目指しています。完成度を求めないということは絶対ありません。レベルをもっとあげるために努力をしています。こどもたちからレベルをあげるとか、衣裳をこうしたいとか声があがってきます。
ちょっとだけきつい場面を作ることで、成長をうながす、乗り越えられるくらいのハードルをあたえるという具合です。
<浦添市のキャリア教育>
私たちの活動は人材育成につきます。
「世界のまち小」というイベントをやりました。
これは分館に入居している国際交流協会さん、文化協会さん、浦添市こども文化連盟太陽樹(ティダージュ)さん等を活用して展開しました。浦添商業と、昭和薬科の高校生80名。琉球銀行から講師をまねいて、世界のお金の流れ、為替の勉強をしました。実際に各国のお金をあつめてきて、両替し、食事等もトルコアイスなど世界の各地のものを提供しました。エコにも注目して、那覇市リサイクルプラザろから、洗食機付の車両をお借りしトレーなど食器をかりてやりました。そういうイベントもやっていました。
そのころは、藤原一博先生の「よのなか課」という教科書を活用して、キャリア教育の一環のことをやっていました。港川中学校のこどもたちが公民館を飛び出して、実際の通り会で職場体験をしていったということもありました。
ファーストフード店の模擬店を出店して、マーケティングのことを考えてみたり。どこに出店したら儲かるかということを、子どもたちと考えていく中で町の立地のこと、駅の1日の利用者数を調べたりして、この場所というのを決めるまでをディスカッションします。この勉強会の中に実際のファーストフード店の関係者がいて、現場の声を聞くということをやりました。
キャリア教育、人財育成にこだわっています。次の時代を作って行くのは、このこどもたちですから。
公民館を利用して便利な所
公民館を利用しているのは。演劇をするのに十分なスペースがあるということ。浦添市の交通機関の便利さなどがあります。
公民館を利用して改善してほしいところ。ここを良くしたらいいのにと思うところ。
改善点などはとくにないです。
ホームだから。ありがたい。つかわせてもらって、感謝の気持ちです。
取材日:2016年1月10日 担当:鳥越一枝