勉強会『みんなでkangaeru公民館のこと。』VOL.1

ー12月26日に開催した「みんなでKangaeru公民館のこと」にて、パーラー公民館とチームまちなかのプレゼンの後、東京大学大学院教授の牧野篤さんにお話いただきました。

新しい取り組み

若狭公民館って今、全国でとても有名なのです。

今回も全国公民館報コンクールで最優秀賞を受賞した。私も審査員のひとりなのですが、いつも新しいものを創りつづけて、どんどんいろんなアイデアを実現しているすごい力を持った公民館だと思う。嗅覚をきかせて社会のニーズをどんどん先取りしながら創っていると思うのです。

若狭公民館の館報、一見普通の館報なのですが、開いてみて、まず驚くのは、折り方が蛇腹になっていることなのです。しかも、横書きなのです。横書きだと開くと全部見えることになるので、見ざるを得なくなってしまう、読まされてしまう。そして、裏も開くとやっぱり見なければいけなくなっている。とてもうまく出来ている。こういうこと全てが高い評価を受けて、最優秀賞をとられたのです。

パーラー公民館やチームまちなかの取り組みは、全国的にみると、とても斬新な取り組みです。公民館というと、建物を造って、そこに人を呼び込む、または講座に来てもらうという形で、「何人集まったから成功した」とか「集まらなかったからどうしよう」とかそんな話ばかりしていた。でも、若狭公民館はちがう。自分から出て行こうとするところがとても魅力的だと思う。「館がない」とか言っていないで、ないのならば自分たちで創ってしまえばいい、というのがとても面白いと思います。

公民館のはじまり

1946年に公民館の構想が出されてから、2016年で70周年でした。憲法より前に構想が出ているのです。公民館は、教育基本法、社会基本法という、いまの公民館を規定している法律の制定以前に普及がはじまっていて、まちづくり・村づくり・ふるさとづくりの拠点として使おうということになっていました。当時、日本はアメリカ占領下にあって、あらゆることにGHQの許可が必要でした。GHQは戦前の日本の隣組制度や町内会が、戦争の動員組織だと見ていたものですから、解散命令を出していたのです。でも、当時の文部省の職員が、公民館の構想をGHQに持って行ったところ、「これは素晴らしい」という評価を得たのです。住民が集まって、自分のまちや村のことを考えて、実践していく。これは素晴らしい、民主主義の基本だ、ということで、GHQも「是非やりなさい」と奨励をしたことがわかっているのです。アメリカにはアメリカの成人教育の実践があるのですけれども、そういうのを日本に持って来てもだめだろう、日本にはやはり日本の文化があって、共同体やコミュニティーがあるので、それにこの公民館のやり方は合っていると評価されたのです。

公民館の普及のために刊行された『公民館図説』を見ると、公民館的な機能があるものを沢山つくっていって、住民が顔をつきあわせて、自分たちの村やふるさとをつくっていくことが求められたということがよくわかります。私が好きな絵は「村の茶の間です」と書かれている絵なのですけれども、そこには、囲炉裏を囲んで、おじいちゃん、おばあちゃん、その次の世代、そしてさらに乳飲み子まで描き込まれているのです。みんなで寄り集まって世間話でもしているのだろうと思うのですが、自分たちの村やふるさとを次の世代に受け渡していくのだという気持ちが強く現れている絵だと思うのです。それまで戦争をして、日本は戦争によって地域とくにふるさとを壊してしまったけれども、自分たちで新しいふるさとを創って、次の世代に引き渡していくのだと、皆が強く思っていた。そのための機関として公民館は受けとめられ、各地に広がっていったのです。

公民館的なもの

若狭公民館が発信している新しい公民館の流れとして出たのが、移動式屋台型公民館であるパーラー公民館だと思います。建物がなければ作っちゃえばいいだろう、という事なのですね。地域の情報発信センターとなるZINE KIOSKのような新しい発想も出て来ています。自分たちで発信の道具も作って、活動をどんどん広げていこうという場所として使われていますね。

それから民間でもStudio-Lというコミュニティーデザインの会社がありますけれども、彼らは、漢字で「公民館」は古いということで、「Co-Minkan」という事業をやっています。

私はいま、東京大学の教育学部にいて、専門は社会教育・生涯学習で、公民館も研究対象です。とくに、人々が学ぶことで まちをつくっていく様々なアクションリサーチを進めています。アクションリサーチのなかでも、日本語でいう介入研究、つまり、地域社会に入っていって、住民と一緒に実践をつくっていくというやり方で、研究を進め、拠点をいくつか持っています。

たとえば、いま全国で空き家が問題になっています。東京の世田谷区でも、空き家がどんどん増えていて、防災上も防犯上も危ないし、景観上もよくない。世田谷区は、世田谷トラストまちづくりという財団に「地域共生の家」という制度があって、その一つに「岡さんのいえ」と呼ばれる場所があって、私たちの研究室も関わらせていただいています。もともとは、子育て中のお母さんたちが、グチでもこぼし合いましょう、子どものことを情報交換しましょうという形で使っていたのです。そこから、地域で交流したい、みんなで活動したいという声を受けて、私が学生を連れて行ってワークショップなどをしながら、活動をすすめてきました。まずは、イベントを打って、この場所を住民の方々に知ってもらうことから入りました。例えば留学生との餃子パーティ。近所の子に来てもらって、作り方を覚えてもらう。文化交流も含めてやろうと。イベントを行って人をよび集めましょうということをはじめていくのです。

そこから、定期的にみんなが集まれる場所をつくりたいという話が出て、いまでは、週に2回、「開いてるデーCAFE」と「駄菓子屋」というのをやっている。これらは自由に使っていい場所として地域に開放されています。最初は一人とか二人くらいしか来なかったのですが、地道に続けていれば、人は集まってくれるようになるのです。やることがなく、暇で仕方がないけど、なかなか地域デビューもしにくいという退職者の方などにお願いしながら、見守り隊をやってもらったりしています。人が集まるようになってきて、多世代交流がはじまっています。見守り隊が庭に砂場もつくってくれて、子どもたちが遊ぶようになり、それにつられて、みんなが集まるようになってきています。鉄道オタクによる「鉄ちゃんクラブ」というのも出来てきたりしています。趣味を持っている人たちは「自分だけで趣味をやっているのはつまらなくなってきたので広げたい」とか「子どもたちに見せたい!」ということなのです。

「たからばこ」という中高生の居場所づくりがあります。昨今の経済状況の下で、共稼ぎの家庭がふえてきたこともあって、中高生が帰ってくる頃には、まだ親が帰宅していない。東京だと、こういう子たちが2、3人集まってコンビニで買い食いしていると、怖がられて通報されて、警察が来てしまうのです。私たちが心配をしましたのは、このように排除されてしまうと、子どもたちは容易に歓楽街に行ってしまったり、 SNSなどに流れてしまうということです。SNS には色々ありますよね、裏の掲示板など私たちが知らない世界があるのです。例えば、「神待ち掲示板」というのがあります。神って神様の神なのかというと、、家に帰っても寂しいからとか、家出した女の子が「今日、泊まるところがないから泊めて」っていう発信をすると「いいよ、うちにおいでよ」と返信がいっぱいくるのです。女性かなと思うと、男性も女性のふりして返信してくることもあって。そこに行くと、そういう関係にならざるを得ないというようなことがいっぱいある。そうなると、子どもたちはこの社会の表面からは見えなくなってしまいますし、彼らの実態がわからないので、手の出しようがなくなってしまって、危ないのです。彼らが大人と繋がれる場所をつくっておく必要がある。こんなことを考えていたら、うちの学生たちが、勉強を見てあげるっていう名目で呼んだらどうかと言い始めて、中高生の居場所づくりを始めたのです。勉強なんか見ないで、大抵は一緒に遊んでいるだけなのですけれども。

これらは従来の公民館からすると公民館ではないのです。パーラー公民館も公民館ではない。でも、私たちの感覚からいうと、公民館「的なもの」として、もっと活用すればいいんのではないかと思うのです。公民館のアウトリーチだと言えばいいのではないか。そして、みんなでまち全体を公民館化していく。みんなが関わって、みんなが楽しんで、みんなが結びついて、それが基盤になっていけば、どんどん人々が動くようになって、お互いに関心を持ち合うようになるのではないか、ということなのです。

地域を動かすもの

公民館と博物館、美術館さらに図書館を含めた社会教育施設と呼ばれているものを、教育委員会から外に出して良いという方針が、中教審から出されました。所管を一般行政に移して、使っても良いということになったのです。博物館はすでに10月から文化庁に移管になっています。今まで博物館は社会教育施設で文化財をきちんと保護しながら、研究をして、公開する施設でしたが、これからは観光資源としても使いなさいと言われているのです。安倍政権の経済政策の中で経済発展に資すること、つまり金儲けをしなさいという大きな方向性があって、どうしてもこれは抗いがたく、そうせざるを得ない。それなら、住民がもっと自由に使いこなして、自分たちで施設を使い返すということががあり得るのではないかという議論をしています。

厚労省は地域包括ケアシステムを推進していて、「住民の人々が、自分たちで支え合って、認知症の高齢者を支えていくような仕組みを作って下さいね」と言っているのですが、ほとんどどこもうまくいっていない。ところが「うまくいっているところがある」と言う。それは、公民館があるところでしょう、と言うのですが、それは議論が逆で、公民館が動いているところは、厚労省が動かなくても、住民が自分たちで支え合って動いているのだから、包括ケアシステムなどといわなくても動いているはずだ、と言うと、厚労省もその通りですね、と認めるのです。

でも、日本全体でお金もなくなってきてるし、これからどんどん高齢者が増えていく中で、施設でとか医療費を使ってという話で済まなくなっています。来年度予算も一般会計は100兆円超えますけども、社会保障で使っているお金は140兆円、特別会計(介護保険料とか国民健康保険料)なのです。特別会計を使って運用しているのですが、国民からは全然見えないですよね。140兆円もかかっていて、なんともならなくなってきている。だから、国民が自分の生活している地域社会で、自分たちでお互いに支えあうようにしむけたいと思っているのです。

しかし、官僚たちはすぐにリーダー養成を考えてしまうのです。指導者養成をすれば地域が動くと思っているフシがあるのです。行政的にお金をつけてリーダー育成すれば地域が動くと思い込んでいるところがあるのですけども、そうじゃないだろうと思います。

地域の人たちが自分でパーラー公民館みたいに楽しく学んで交流していく中で、「じゃあ、これやろうよ!」という話になってきて、初めて動くのだろうと思うのです。だから例えばまちづくりですよとか、包括ケアですよと言って動かそうと思うと無理がでてきてしまう。むしろ住民の方々が楽しく交流していて、市民活動でも何でもいいから一緒になってやってるところへ、「実はうちのおばあちゃんね」とか「いや実はうちもそうなの」という話が出てくると、「じゃあ、助け合ってやろうよ」ということになるのではないでしょうか。そうなると、人々は動くし、地域社会も変わるのだろうと思うのです。公民館での活動の中で、声を掛け合って、リーダーが育っていくということはあり得るかもしれません。でも「包括ケアシステム作りましょう、あなたがリーダーですよ、お金出しますから」と言われて動くかというと、多分動かないのではないかと思うのです。その意味では、パーラ―公民館とか、チームまちなかの皆さんがやっていらっしゃる緑ヶ丘公園の活用の取り組みは、むしろその基盤づくりをされているのではないかと受け止めています。新しい社会をつくる時の最末端みたいな、一番基盤でありながら実は一番先端を行っているような感じかな、と受け止めています。

面倒くさいをこえる

だいたい面倒くさいのです、いろんな事をやるのは。なぜかと言うと、なくても基本的には困ってない、お金払えばなんとかなるかもしれないし、別に特にやらなくたって日々はすごしていける、別にいいんじゃないの?と思いますよね。だけど、それを超えるものがあるはずなのです。パーラ―公民館やチームまちなかの活動がつくっていらっしゃること、それはいったい何かと言うと、もうお分かりだと思いますけども、いかがでしょうか? 面倒くさいを超えるのは一体何か。『楽しい!』ってことであったり、『子どもがありがとうと言ってくれる』とか、また『一肌脱ごうと思う心意気が出てくること』があるのだと思うのです。

あるとき、介護施設に行って、おばあちゃんと話をしていたときに、「おばあちゃん好きな言葉ってないの?」って聞いたら、「嫌いな言葉ならいっぱいある。一番嫌いな言葉は「ありがとう」だ」と言うのです。どうして?と聞きましたら、年取ってから、ずっと「すみません」「ありがとう」と言っていると、というのです。一度でいいから「ありがとうと言われたい」と言われました。そうだと思うのです。人から「ありがとう」って言われると元気になるけれども、人に頭下げて「すいません」「ありがとう」って言い続けているうちに、「ありがとう」が嫌いになっていってしまう。人から「ありがとう」と言われる関係があると、嬉しいし楽しいし「ちょっと面倒くさいけどもやってやろうよ」とか、「一緒にやろうよ」ということになってくるのではないか、と思うのです。こういうことは、本来、すでに公民館がつくっているのではないでしょうか。こういうことを、パーラー公民館が広げていっていると思うのです。そういうことだと思います。

みんなでkangaeru公民館のこと
2017年12月26日
会場:くもじ・にじいろ館
ゲスト:牧野篤(東京大学大学院教育学研究科 教授)

パーラー公民館
企画・主催:NPO法人地域サポートわかさ
設計・監修:小山田徹/制作:High Times うえのいだ
支援:沖縄県、公益財団法人沖縄県文化振興会
「平成30年度沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業」