アーティストと開発する社会教育プログラム報告

 

先日、沖縄県文化振興会の支援事業報告会にて「アーティストと開発する社会教育プログラム アートな部活動」の報告をさせていただきました。

令和2年度に取り組んだアートな部活動を企画するにあたって、その背景やそれぞれの部活動の活動紹介、事業効果や今後の可能性についてお話ししました。今年度は、コロナの影響もありなかなかスムーズに活動できないこともありましたが、無事報告し終えたことにホッとしています。

報告する際に使ったパワーポイント資料を用いて、ブログでも簡単に紹介します。

この事業を取り組んだ背景として、昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大があります。コロナ禍でこれまでとは大きく異なり、私たちは様々な交流の場や機会を失い、生活様式が大きく変化しました。

つながりがなくなり社会の弱いところが顕在化したことで、改めてコミュニティのつながりの重要性を再確認しました。

それと同時に、私たちがイメージする繋がりの中には、誰がいて誰がいないのか想像力を持って取り組む必要性を感じました。これまでの地縁コミュニティーだけでなく、興味関心に基づく新しいコミュニティーを形成することを目的に今回新しく取り組んだのが、「アートな部活動」です。

 3 名のアーティ ストとともに地域の「部活動」づくりに取り組み、クリエイティブな活動を通して、新たなコミュニティ形成のあり方を模索しながら、地域団体、市民、NPOなど、社会課題に対して活動する様々な専門機関と連携しながら取り組みました。

まず、この部活動を始動させる前に「アートな部活動」の意義をより深めるために、オンラインのキックオフトークイベントを開催しました。

県内外から多くの方が参加し、この取り組みに対する関心の高さが伺えました。

そして、どのような部活動を行なったかというと、1つはダンボール部です。

廃ダンボールを1枚1枚の紙にして、その紙を使って新しいものを生み出す活動です。3つの部活動の中でも、子どもから大人まで幅広い世代の部員が参加しています。

顧問は、県内のアーティストである儀間朝龍さんです。
廃ダンボールを素材に身の回りのモノを制作しています。

この取り組みに賛同して関わって頂いたのは、若狭地域の海岸清掃活動をしている地球ハートクラブの子どもたちです。

地域の商店や酒屋さんから廃ダンボール回収して紙にし、どのような文具をつくるか、どのように活用するかを考えながらワークショップを重ねていきました。

その中で、地域にあるホテル アンテルーム  那覇と連携して、地球ハートクラブメンバーがホテルで出た廃ダンボールを使って、オリジナルのステッカーを作り商品として販売し、その売り上げが自分たちの活動につながるという仕組みもできました。

ユーチューブは、映像の撮影・編集技術を学び、在留外国人をはじめとする地域住民の生活目線でまちを紹介する部活動です。那覇の魅力を再発見するとともに多様な背景をもった隣人の存在を伝える映像プロジェクトです。

顧問は、美術家・映画監督・作家である藤井光さんです。
藤井さんは、東京在住なので、毎回オンラインで参加していただきました。

撮影や編集技術を学んだあと、外国人と日本人の混成チームをつくり、それぞれのチームでテーマを決めて撮影・編集しました。

また、学生がいるチームは、制作した作品を学生対象のショートムービーコンペにチームとして応募しました。

ちなみに、完成した部員の作品は、ユーチュー部のサイトを開設して、誰でも鑑賞できるようにしています。興味がある方はぜひユーチュー部 若狭公民館と検索してください。

最後は、ポストポスト部です。
地域に設置したポストに投函されるものに対して、どんな変化が生み出せるかを部員で話し合いながらお返事をする部活動です。

顧問は、県内で活動しているアーティストの平良亜弥さんです。平良さんは、昨年度までパーラー公民館の事務局を務めていました。

ポストポスト部の仕組みとしては、まずポストに投函されたものにどのようにお返事するのか話し合い、掲示板にお返事を掲示しました。1対1のお返事ではなく、掲示板に掲示することで、公民館にくる利用者全員に手紙のやり取りを見せることで、みんなが参加できるような仕組みになっています。

また、公民館だけでなく曙小学校区のまちづくり協議会が運営している月1のパーラー公民館にもポストのPちゃんを連れて参加しました。
その場で投函してもらい、次のパーラー公民館開館日にお返事掲示板をもっていく、そしてまたその掲示板を見てお手紙を書いて投函するという流れです。

実際にどのようなお返事をしているのか一例を紹介します。

この写真は、大正8年ごろの沖縄のポストカードが投函された際、ポストカードの中に若狭付近の写真が数枚含まれていたので、実際に昔といまを比べながら、歴史背景もたどりながら町歩きをして、掲示板でお返事をしました。

紹介した3つの部活動の成果発表の場として、地域にある「ホテル アンテルーム 那覇」の協力を得て、「つながると、つくる。かかわると、かわる」展を3日間開催し、ホテルのロビーとスイートルームを使って、各部活動部員の作品とアーティスト顧問の作品を展示しました。

ダンボール部は、ホテルから出た廃ダンボールを使って、未来の○○というテーマで本を制作しました。

ユーチュー部は、部員が制作した作品を上映しました。

ポストポスト部は、クローゼットを部室に見立てて、これまで投函された手紙とお返事、ポストポスト部のキャラクターPちゃんのグッズや制作した歌や絵本などを展示しました。

また、連携イベントとして、3人のアーティストのオンライントークイベントも開催し、それぞれのアーティストとしての活動や問題意識、部活動の顧問としてお話をしていただきました。

それから、ホテルに来れなかった地域の方や公民館利用者に向けて、公民館のロビーでも展覧会を開催しました。
このホテルと公民館ロビー展は、350人以上の方が参加してくださいました。

社会教育とアートの視点からその意義や展開の可能性について考えると同時にウィズコロナにおける地域社会のあり方について考えるため、オンラインのフォーラムを開催しました。

1回目のフォーラムは、 「アート×教育」というテーマで、アートと学校教育、社会教育の専門家をお招きし、アートの創造性が地域コミュニティや学校に与える影響や可能性についてお話しして頂きました。

2回目は、東京大学とタイアップしトークイベントを開催しました。

「アート×社会教育 ~若狭公民館の挑戦~」というテーマで、アートな部活動の取り組みについてお話しました。

コロナ禍で地域活動が止まり交流の機会を失いましたが、アーティストとともに取り組むことで、これまで地域活動に参加しなかった層の方が参加し、新たな人的交流が生まれました。

また、部員同士が同じ目的を持って取り組み、個人の創造力を発揮しながら、お互いに達成感と喜びを共有することで、緩やかにコミュニテイが形成されました。

ダンボール部は、子どもから大人まで異なる世代が交流しながら作業し、顔の見える関係性を築くことで、子どもたちの放課後の居場所となりました。

ユーチュー部は、在住外国人と地域住民が映像制作を通して共に活動することで、お互いの文化を理解し信頼関係を築き、部活動以外の場でも交流する機会が増えました。

ポストポスト部は、公民館休館中に集まれなくてもオンラインで活動できる仕組みをつくり、仕事帰りや家事の合間に参加する働き世代や県外からの参加者など、多種多様な方が地域活動に参加できる機会となりました。

また、展覧会を地域のホテルで開催することで、地域資源を見直す機会になり、活動を広く発信することにもつながりました。

最後になりましたが、アートな部活動によって創造力を刺激された部員たちは、今年度の事業終了後も自主的に活動を継続しています。

創造する喜びと達成感を共有する新たなコミュニティを形成することはできましたが、今後も持続可能なものにするには、本事業で連携した個人や団体等と関係性をより一層深め、部員たちが自治的に活動を継続するためにもアーティストが伴走する期間が必要です。

社会教育を強化し、地域コミュニティのあり方を再考するという点においては、楽しいだけではなく、批評的思考を育むためのプログラムを設けるの必要性も感じています。

引き続き、地域に開かれた部活動として長期的に活動を続けていけるよう取り組んでいきます。

以上、NPO地域サポートわかさの事業報告でした。


沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業は、ほかにも面白い取り組みがたくさんです!(以下、沖縄アーツカウンシルHPより引用)

Art Initiative Okinawa (AIO)
「アートセンター設立に向けて県内、国内外ネットワーク構築、人材育成及び交流事業」

アートを通して、沖縄と世界が繋がる「ネットワーク」の形成をめざす。オンライン/オフラインのプラットフォームを構築し、対話やアートプロジェクトの実践などの取り組みを通して若手育成の機会も作る。

Art Initiative Okinawa(AIO)

 

一般社団法人すでぃる
「平和と鎮魂」をテーマとするネットワーク型国際芸術祭へ向けたアーティスト交流事業」

沖縄県内のアーティストが韓国及び台湾からの参加者と交流を深め、那覇市民ギャラリーや佐喜眞美術館をはじめとする県内各地で、「平和と鎮魂」をテーマとする沖縄アジア国際平和芸術祭を展開する。

一般社団法人 すでぃる

 

こちらのリンクから、他団体の取り組みもご覧いただけるのでぜひ。

採択事業紹介

 

主催:NPO法人地域サポートわかさ
「アーティストと開発する社会教育プログラム」
支援:沖縄県、公益財団法人沖縄県文化振興会
「令和2年度沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業」